1.冬至とは?
1-1. 一年で昼の時間が最も短くなる日
冬至とは、北半球において一年で太陽の位置が最も低くなるため、昼の時間が最も短く・夜の時間が最も長くなる日のことです。
そもそも、なぜ昼と夜の長さが年中ちょうど12時間ずつではないのでしょう。
その答えはずばり、「地球の回転軸が傾いているから(昼夜の長さが時期によって変化する)」です。
地球の回転(自転)軸は、1年をかけて太陽の周りを回る「公転面」に対して、約23.4度の角度があります。
この傾きが太陽の方に向いている時期は、夏。つまり、暑く、昼が長くなります。
一方で、太陽とは逆の方に向いている時期は冬となり、寒く、昼が短くなります。
二十四節気は、紀元前4世紀頃に中国で作られました。というのも、当時の中国で使われていたのは月の動きを基準とする太陰暦。太陰暦は実際の季節感と少しずれがあり、農業を営む上では不便でした。
そこで作られたのが、季節の移ろいを表した二十四節気です。季節に合わせて種まきや稲刈りを行うため、農村に暮らす人々にとって農作業の共通の目安として役立ちました。
こうして古くから親しまれている二十四節気は、2016年にユネスコの無形文化遺産へ登録されたほか、2022年には北京オリンピックの開会式のカウントダウンに用いられたことは記憶に新しいでしょう。
1-3. 別名「一陽来復」
実はこの冬至、別名を「一陽来復(いっちょうらいふく)」といいます。
これは、中国の紀元前に書かれた「易経」の言葉で、中国の陰陽の考え方に基づいたものです。
陰陽ではすべてのものは陰と陽からなるとされますが、「陰極まって陽に転ずる」という言葉もある通り、悪いことが続いた後には幸運に向かうことを意味します。
生命の象徴である太陽の力が最も弱まる冬至ですが、逆にいうと、翌日から太陽の力は盛り返し日照時間は伸びていきます。その折り返し地点として、冬至をポジティブにとらえた表現といえるでしょう。
2.冬至はいつ?
2-1. 2023年の冬至は12月22日(金)
今年(2023年)の冬至は、12月22日(金)です。
冬至は天文学的に「太陽黄経が270度になる日」と定義されていますが、毎年多少変動します。
2023年以降の冬至は以下の通りです。
(参考) 2023年12月22日 2024年12月21日 2025年12月22日 2026年12月22日 2027年12月22日 2028年12月21日 2029年12月21日 2030年12月22日 2031年12月22日 2032年12月21日 2033年12月21日 |
ちなみに、冬至は天文学的には「昼が最も短い日」とされるので1日だけですが、二十四節気の暦は期間があるものです。
したがって、暦の上では、2023年は12月22日(金)〜2024年1月5日(金)が冬至の期間となります。
2-2. 日の出・日の入りの時刻は?
東京都における日の出・日の入りの時刻は以下の通りです。
(出典:日の出入り@東京(東京都) 令和 5年(2023)12月 – 国立天文台暦計算室)
2-2-1. 日の出・・・・ 6:47
2-2-2. 日の入り・・・16:32
なお、冬至は1年で最も昼が短い日ではありますが、最も日の出が遅く、日の入りが早い日、というわけではありません。実際には、日の出が最も遅い日は冬至の後、日の入がもっとも早い日は冬至の前になります。
その理由は、太陽の高さ、動く速度など天文学的な理由が複雑に絡み合っています。
詳しくはこちらをご覧ください。
1年のうちで、日の出、日の入が一番早い日(遅い日) はいつ? | 国立天文台(NAOJ)
3.冬至の歴史は?
3-1. 古代中国において成立
二十四節気は春秋戦国の頃に成立したとされていますが、その中でも特に重要な春分・夏至・秋分・冬至の4つ(まとめて「二至二分」)は、さらに時代を遡り、中国最古の王朝・殷の時代に太陽の動きをもとに観測されていたとされます。
古代中国において使われていた暦は、旧暦。つまり、月の動きを基準にする暦であるため、暦と季節がずれ、農業を営む上では不便なものでした。
そこで古代中国の人たちは、太陽の動きを観測して季節にあう暦を作ろうとします。
まだまだ天文学的な研究もされておらず、測定技術の発達していない当時ですが、「冬になると太陽の高度は低く日は短くなり、夏は太陽は真上から光を注ぎ日が長くなる」ということは経験上わかっていたことでしょう。
これを利用した測定方法が次のイラストです。
つまり、
・太陽が低く、影が長くなるのが冬
・太陽が高く、影が短くなるのが夏 となります。
中でも、最も影が短くなるのを「冬至」としました。
3-2. 昔は冬至が一年のはじまり
前に述べた通り、太陽が低く物の影が長くなる日(つまり冬至)を、暦のはじまりの基準としました。
したがって、古くは中国では冬至を含む月を、十二支の一番はじめの子(ね)を付け「子月(ねづき)」と呼びました。
4.冬至には何をする?
4-1. 柚子湯に入る
冬至と言えば、柚子湯にはいる。夕方のテレビを見ていると、季節を感じるそんなニュースが耳に入ってくることでしょう。
「冬至に柚子湯に入ると風邪をひかない」といわれ、銭湯ができた江戸時代から始まったといわれる意外と新しい風習です。
では、冬至に柚子湯に入るというのはなぜなのでしょうか?
以下、さまざまな理由がありますので順に見ていきましょう。
4-1-1. 禊の風習として
冬至に柚子湯に入ることには、禊の意味合いがあります。柑橘系の柚子は香りが強いため、邪気を払ってくれるものとされています。
冬至が1年で一番太陽の力が弱まる日ということは、逆にいうと、翌日からは日が強く長くなっていく日ともとらえられます。
このことから、冬至は「太陽が生まれ変わる日」と考えられ、冬至を境に上昇運に転じる、ともいわれます。
このような大切な日の前の日に厄を落とし禊をする。日本ならではの発想の文化です。
4-1-2. 心と身体にうれしい効能あり!
柚子湯には、リラックス効果、保湿効果、冷え性改善などの嬉しい効能があります。
まず柚子といえば思いつくのがその香りのよさでしょう。どこか懐かしく、どこかほっとするような気分にさせてくれるこの香り。
ゆずの香りのもととなっているリモネンとシトラールという2つの成分が、不安や緊張をほぐし、気持ちをリラックスさせてくれます。
次に、柚子の果実・果汁は多糖類のペクチンを含んでいるため、保湿作用があります。
さらに、他の柑橘類と同様に柚子も豊富なビタミンCも含んでいます。ビタミンCは肌の保水性を高め、抗酸化作用を有することから、乾燥肌の予防や老化予防が期待でき、肌を守るバリア機能の効果が期待できます。
そして最後に、柚子は冷え改善に役立ちます。
秘密は、柚子に含まれる精油(アロマオイル)にあります。この精油には、リモネンという柑橘系の皮に多く含まれる成分が含まれており、交感神経を活性化させ血管を広げ、血流の流れをよくして身体を温めます。
身体を温めることは、いいこと尽くしです。冷えやむくみ、肩こり、腰痛、関節痛など血行不良から起こる不調の改善に役立ちます。
これらの効能を得るためには、柚子を丸ごと湯船に浮かべるのではなく、半分に切ったり輪切りにしてガーゼや水切りネット(ない場合は洗濯ネットでも可)に入れることをおすすめします。
ただし、お肌が弱い方は、柚子の皮に含まれるリモネンによる刺激でヒリヒリすることもあるかもしれません。
心配な方は、柚子を切らずに丸ごと浮かべたり、洗面器に柚子を浮かべて香りを楽しむなど工夫してみましょう。
4-1-3. 長年の苦労が実りますようにとの願いを込めて
「桃栗三年柿八年」ということわざを聞いたことがあるかと思います。
果樹を植えて食べられる実を収穫できるまでに歳月を待たねばならないことから、何事も成就するまでにそれ相応の年月がかかるということをあらわしたことわざです。
実はこれには続きがあるのをご存知でしょうか?
地域によって様々ありますが、 「梅は酸い酸い十三年」「梨の馬鹿目が十八年」「柚子は大馬鹿十八年」「林檎にこにこ二十五年」などがあります。
ことわざによると、柚子は実の収穫までに18年という“大馬鹿”と言われるほど長い年月がかかるとのこと。
柚子湯に入ることは、柚子の実の収穫までの期間が長いことになぞらえて、「長年の苦労が実りますように」との願いを込めてのことだともいわれています。
4-1-4. 語呂合わせ
柚子(ゆず)=「融通がきく」、冬至=「湯治(とうじ)」という語呂にかけて、「冬至(湯治)にゆず湯に入ることで、融通がきいてうまくいく」と考えられていました。
湯治とは、温泉地に長く滞在して、病気を治したり、体調を整えたりすることをいいます。
5.冬至に食べるものは?
5-1. かぼちゃ
「冬至にかぼちゃを食べると風邪をひかない」といわれています。思い返すと、小さいころ冬至には食卓にかぼちゃの煮物があった、という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、かぼちゃは夏に旬を迎える野菜です。では、なぜ冬真っただ中にかぼちゃを食べようというのでしょうか。
その答えは、昔の人々の知恵にあります。
現代に比べて食材の保存技術が発達していなかったその昔、長期保存ができるかぼちゃは寒い冬にも食べることができる貴重な緑黄色野菜でした。
栄養価の高いかぼちゃを食べて風邪を予防し、厳しい冬を乗り越えようとする考えから、冬至にかぼちゃを食べるようになったとされています。
実際に、栄養学的な観点でも、かぼちゃはベータカロチンやビタミンC、食物繊維も豊富で、栄養満点です。 特にベータカロチンには抗酸化作用や免疫力を高める効果があり、風邪予防にはもってこいの野菜なのです。
5-2. 「ん」のつく食べ物
冬至には太陽が最も弱まり日が短くなりますが、翌日からはその太陽が力を取り戻すように日が長くなっていきます。
このことから、中国の陰陽の考え方に基づき、冬至を「一陽来復」といい、悪いことが続いた後には幸運に向かう運気上昇の日であるともされています。
そんな大切な日に「運」を呼び込もうと、冬至には「ん」のつくものを食べる風習が昔からあるのです。
特に「ん」が名前に2つ付くものは運盛りといい、縁起のよい食べ物とされています。
※これらの食べ物をあわせて「冬の七種(ななくさ)」といいます。
冬においしくいただける食べ物が多く並びます。これらを食べて運を担ぎ、寒い冬を乗り越えましょう。
5-3. 小豆
冬至には、小豆を食べるという風習もあります。
豆は「魔(ま)を滅(め)する」ことや、小豆の赤色は厄除けの意味があることから、小豆は冬至に食べられています。
5-3-1. 小豆粥
冬至に小豆粥を食べる風習は、6世紀の中国で書かれた荊楚地方(中国南方・長江中流域)の年中行事を記した「荊楚歳時記」にその起源があります。
その中で、「冬至の日に亡くなった息子が疫鬼となったが、彼が赤豆を恐がったため、冬至の日には小豆粥を作って疫を払うようになった」との内容の記述があります。
5-3-2. かぼちゃのいとこ煮
いとこ煮は、火の通りにくい材料から追々(おいおい)入れて煮ることから、おいおい=甥甥の語呂合わせで「いとこ」煮と言われています。
5-4. こんにゃく
こんにゃくの生産が盛んな群馬県をはじめとする北関東の地域では、「冬至の砂払い」と呼ばれる習慣があり、冬至にこんにゃくを食べるとよいとされています。
この風習は、食物繊維が豊富なこんにゃくが、一年で体内に蓄積された不要なもの(=砂)を出して体の調子を整えてくれると考えられていたことに由来するそう。
6.冬至にやってはいけないことは?
6-1. 特にありません
冬至にやってはいけない、とされていることは特にありません。
どちらかというと、柚子湯に入ったり、かぼちゃを食べたりと、色々とやるとよいとされることが多い日です。
とはいえ、冬至は冬真っただ中の寒い時期です。体を冷やすようなことはせず、温かくして過ごしましょう。
7.世界は冬至をどう見てきた?
私たち人間をはじめとする生物は、太陽がないと生きていけません。そんな生命に欠かせない太陽が復活するおめでたい日として、冬至は世界中で大切に扱われてきました。
7-1. クリスマスの起源は古代ローマの冬至祭りにあり
現代の私たちにとっては、12月25日はクリスマス。
ですが、古代ローマにおいては毎年12月25日(固定)は冬至とされており、太陽の復活を祝うお祭りが行われていました。
農耕神を祀る「サトゥルナリア祭」
新年の祝日「カレンズ」
異教の神様「ミトラス」の誕生日
これらのお祭りが習合して生まれたのが、クリスマスであると考えられています。
7-2. 古代北欧でのユール
ユール(Yule)とは冬至を意味する言葉です。
キリスト教やクリスマスが伝わる前の時代から、古代ケルト(北欧)においても、冬至は太陽が滅びて新しい1年を迎える日だと信じられていました。
北極圏に近い北欧では、冬至前後の時期は日中でも薄暗く太陽が見えない状態(極夜)が続きます。したがって、冬至明けの太陽は非常に神聖なものであるとされ、人々は大いにこの太陽の復活を祝いました。
同時に、冬至の時期は、悪霊や悪魔たちの活動が活発になると考えられており、大きな薪を12日間燃やし続けることでこそれらを鎮める伝統行事が、今でも行われています。
この薪のことをユールログ(Yule log)と呼びますが、これを模したのが、クリスマス時期にケーキ屋に並ぶブッシュ・ド・ノエル(クリスマスの薪)です。
7-3. 古代イランのヤルダ・ナイト
イランをはじめとする中央アジアには、一年のうちで最も長い夜をお祝いするヤルダ・ナイトという風習があります。
このヤルダ・ナイトは、イランの風習の中でも最も古いもののうちの一つであり、7000年以上続く伝統的な行事です。
ヤルダ・ナイトでは家族が集まり、果物や郷土料理の食事を楽しみます。
特にザクロは、硬い外皮が「夜明け」「誕生」、中の真っ赤な種は「生命の輝き」とされ、誕生、復活、生命の循環を象徴すると考えられています。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。
冬至は、北半球において昼の時間が最も短くなる日。天文学的な意味合いもありますが、暦の上では二十四節気の一つでもあります。古来より、日本だけでなく世界中で、冬至は太陽が力を取り戻す日として大切にされています。
そんな冬至は、今年は12月22日(金)です。
冬至にやりたいことは、
・柚子湯に入って身を清め
・小豆、かぼちゃを食べて厄を払い
・「ん」のつく食べ物を食べて縁担ぎ
どれも特別なものは必要なく、取り入れやすい風習といえるでしょう。
今年の冬至はゆっくりと柚子湯に入って温まり、小豆やかぼちゃなどを食べてしっかり栄養を取り、健やかな年末を迎えましょう。
<参考資料>
暦Wiki/季節/二十四節気とは? – 国立天文台暦計算室 (nao.ac.jp)
冬至:天文と歴史とトリビア | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)
【クリスマスと冬至の関係】キリストの誕生日は太陽の誕生日でもあった?|kinendar(キネンダー)
よくある質問
[質問]今年の冬至はいつですか? |
[回答]2023年の冬至は、12月22日(金)です。 |
[質問]冬至に柚子湯に入るのはなぜですか? |
[回答]冬至に柚子湯に入ることには、禊の意味合いがあります。柑橘系の柚子は香りが強いため、邪気を払ってくれるものとされているからです。また、柚子には血行を促進し心身ともによい効果があります。その他、「桃栗三年柿八年」の続きの一つに「柚子は大馬鹿十八年」がありますが、実がなるまでに長い年月が必要である柚子をお風呂に入れ、長年の苦労が実るようにとの願いを込めるといった意味合いもあります。 |
[質問]冬至にやってはいけないことはありますか? |
[回答]特にありませんが、冬至は冬真っただ中で寒い時期です。体を温かくしてお過ごしください。 |