1.夏至とは?
1-1. 一年で昼の時間が最も長くなる日
夏至とは、北半球において一年で太陽の位置が最も高くなるため、昼の時間が最も長く・夜の時間が最も短くなる日のことです。
夏至には「日長きこと至る(きわまる)」という意味がありますが、まさにその通り。
地球の回転軸は傾いているため、昼夜の長さが時期によって変化します。
地球の回転(自転)軸は、1年をかけて太陽の周りを回る「公転面」に対して、約23.4度の角度があります。
この傾きが太陽の方に向いている時期は、夏。つまり、暑く、昼が長くなります。
一方で、太陽とは逆の方に向いている時期は冬となり、寒く、昼が短くなります。
2.夏至はいつ?
2-1. 2024年は6月21日(金)
今年(2024年)の夏至は、6月21日(金)です。
天文学的には、「太陽黄経が90度になる日」を夏至と定義されていますが、毎年多少変動します。
一方で、暦の上では、2024年は6月21日(金)〜7月5日(金)(次の二十四節気・小暑の前日まで)が夏至の期間となります。
天文学的な定義とは異なり、二十四節気の暦は期間があり、夏至の日一日だけを示すものではないのです。
2-2. 日の出・日の入りの時刻は?
東京都における日の出・日の入りの時刻は以下の通りです。
(出典:日の出入り@東京(東京都) 令和 6年(2024)6月 – 国立天文台暦計算室)
2-2-1. 日の出・・・・ 4:26
2-2-2. 日の入り・・・19:00
なお、夏至は1年で最も昼が長い日ではありますが、最も日の出が早く、日の入りが遅い日ではありません。実際には、日の出が最も早い日は夏至の前、日の入がもっとも早い日は夏至の後になります。
その理由は、太陽の高さ、動く速度など天文学的な理由が複雑に絡み合っています。
詳しくはこちらをご覧ください。
1年のうちで、日の出、日の入が一番早い日(遅い日) はいつ? | 国立天文台(NAOJ)
2-3. 冬至と比較してみよう
夏至の対になるのが「冬至(とうじ)」であり、1年で最も昼が短い日となります。
ここで、夏至と冬至の日の出入り時間を比較してみると、夏至は当時よりも約5時間も日照時間が長いことがわかります。
(出典:日の出入り@東京(東京都) 令和 6年(2024)06月 – 国立天文台暦計算室 (nao.ac.jp))
3.夏至に食べるものは?
冬至といえば、かぼちゃを食べたり、柚子湯に入ったりするのが古くからのしきたりです。
一方で、夏至は「夏至といえばこれ!」という全国共通の定番の食べ物はないといえるでしょう。
ここでは、一部の地域ではありますが、夏至に食べるよいとされるものを紹介します。
3-1. たこ(関西)
関西地方では、夏至にたこを食べる風習があるとか。
ちょうど田植えの時期と重なる夏至。たこの足の吸盤が吸い付くように、「苗が四方八方に広がり、しっかり根が張りますように」と豊作の願いを込めて、神様にたこを捧げたことが由来です。
また、たこは特に「半夏生」に食べるともいわれます。
半夏生とは、二十四節気と同じ古代中国で作られた「七十二候(二十四節気をさらに細分化したもの)」の一つであると同時に、日本独自の暦「雑節(ざつせつ)」のひとつでもあります。
雑節の半夏生は、夏至から数えて11目を指し、2024年は7月1日です。
半夏生のころは、梅雨明けを目前に控える頃。田植えを終わらせる目安となっています。
そんな田植えで疲れた体を癒すためにも、この時期が旬のたこはぴったりなのです。たこは滋養強壮にもよい食材であり、代表的な栄養素として疲労回復や肝機能改善によいとされる「タウリン」が豊富に含まれています。
3-2. 半夏生餅(奈良、大阪の河内地方)
(出典:農林水産省Webサイト 半夏生餅、さなぶり餅 | にっぽん伝統食図鑑 | 農林水産省 (maff.go.jp))
夏至から数えて11日目の「半夏生」の日。
この頃には小麦の収穫は終わり、田植えも一段落することから「半夏生餅」を食べて疲れた体を癒します。
「半夏生餅」とは、つぶし小麦ともち米を混ぜてついた餅にきな粉をまぶしたもので、別名「小麦餅」ともいいます。
他にも、田植えを終えて田の神を送り感謝する行事である早苗饗(さなぶり)に食べられることから、「さなぶり餅」ともいわれます。
3-3. 新小麦の焼き餅(関東)
新小麦と同量のもち米を混ぜ合わせてついたお餅です。昔から米と小麦の二毛作が行われていた関東地方では、神様へのお供え物として作られていました。
奈良の半夏生餅に似ていますが、半夏生餅はきな粉をまぶして食べますが、関東の焼き餅は焼いて食べるという点が異なります。
3-4. 焼きさば(福井県大野市)
(出典:半夏生さば|イベント|【公式】福井県 観光/旅行サイト | ふくいドットコム (fuku-e.com))
福井県大野市には、半夏生の日に、串に刺したサバの丸焼きをを食べる風習があります。
夏バテ防止のために、藩主が焼きサバを食べることを奨励したことが始まりとされており、江戸時代後期にはこの風習が定着していたとのこと。
2021年には、この「半夏生さばの食文化」は文化庁が行う事業である「100年フード」に認定され、世代を超えて受け継がれる食文化として評価されました。
3-5. 水無月(京都府)
夏至の期間中、特に6月30日には「水無月(みなづき)」という和菓子を食べる風習が京都にあります。
旧暦の6月の名前が付けられたこの「水無月」。実は、平安時代に誕生した歴史ある和菓子なのです。
三角形をしたういろうの上に、甘く煮た小豆がのっています。ういろうは半透明をしており、いかにも夏らしく涼しげな見た目です。
さて、この「水無月」という和菓子は、「夏越の祓」という伝統行事と深い関係があります。
「夏越の祓」とは、半年の間に身に着いた穢れや災いを払い落として身を清め、残り半年の無病息災を願う行事のことです。
時を遡り、平安時代の貴族たちはこの「夏越の祓」の際に氷を食べることで暑気払いをしました。しかし、当時は氷は大変貴重だったため、庶民が簡単に手に入れられるものではありませんでした。
そこで、庶民たちは、麦の粉を練って蒸したういろうを三角形に切った、氷に似せたお菓子を作って食べていました。
また、水無月の上にのっている小豆は、魔除けの意味があります。赤色は魔除けの意味合いが強く、鬼や悪魔が嫌う食べ物とされているからです。
3-6. 無花果田楽(愛知県尾張地方の一部)
愛知県の尾張地方の一部では、半分に切ったいちじくに田楽味噌をかけた「無花果田楽(いちじくでんがく)」という料理を食べる風習があります。
いちじくと味噌田楽というと少し変わった組み合わせだなと感じるかもしれません。
いちじくは、不老不死の果物と呼ばれるほどに栄養が豊富です。一方で、田楽は、平安時代中期に成立した豊作祈願の踊りである「田楽」に由来しています。
このように、無花果田楽は、健康と豊作の2つの願いが込められた夏至の食べ物なのです。
3-7. うどん(香川県)
3-8. 冬瓜(静岡県/全国)
静岡県で夏至に食べるものといえば「冬瓜」。
「冬の瓜」と書くため、一見すると冬の野菜と思いきや、実は夏が旬の野菜です。冷暗所で保存すれば冬までもつことから、冬瓜と名付けられたとされています。
冬瓜が夏至の食べ物とされる理由は、その豊富なカリウムやビタミンCが、疲労回復や夏バテ防止に効果的だからです。
さらに、冬瓜は水分を多く含んでいるため、暑い季節の水分補給にも適しており、夏至の食べ物としてふさわしいといえるでしょう。
夏至に冬瓜を食べる風習を、静岡に限定するものと、全国的な風習であるとする場合があります。
3-9. みょうが(三重県)
三重県では、夏至に食べられる食材としてみょうがが知られています。
みょうがは6月に旬を迎えるため、夏至に食べると栄養満点です。
半夏生餅と同様に、田植えの労をねぎらう意味も込められています。
4.夏至のお祭りは?
4-1. 二見興玉神社(三重県津市)
日本の夏至祭りといえば、二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ/三重県伊勢市)で行われる「夏至祭」が有名です。
伊勢神宮に祀られる天照大御神を讃える行事であり、夏至の日に二見浦で夫婦岩の間から昇る朝日を浴びながら禊を行います。
夏至の前日には「鎮魂行法」が、当日には「夏至祭禊」が行われ、太陽を拝み、日光を浴びて体を清める儀式です。
(参考)夏至祭禊・鎮魂参加について | 二見興玉神社 (futamiokitamajinja.or.jp)
4-2. 夏至祭り(北海道当別町)
(出典)当別・レクサンド都市交流協会 | 夏至祭 (tobetsu-leksand.com)
スウェーデンのレクサンド市と姉妹都市である北海道当別町。
5.世界の夏至のお祭りは?
夏至は、北半球において一年で太陽の位置が最も高くなるため、昼の時間が最も長く・夜の時間が最も短くなる日のことですが、北極圏に近くなると、ほぼ一日中太陽が沈まない「白夜(びゃくや)」という現象が見られます。
そのため、北欧諸国では、とりわけこの夏至祭りが盛んにおこなわれています。
5-1. イギリス
イギリスの古代巨石遺跡「ストーンヘンジ」で祝われる夏至祭が有名です。
新石器時代に建てられたとされるこの謎多き巨石群は、古代ケルト人が信仰していたドルイド教の聖地といわれます。
このストーンヘンジは、1年で最も昼が長い夏至の日になると、入り口にあたるヒール・ストーンから太陽が昇り、日光が中央に向かってまっすぐ差し込むよう設計されており、古代から太陽信仰と関わりがあると考えられています。
そんなストーンヘンジ。通常は遺跡に近づくことはできませんが、夏至の日だけは特別に石の間を歩くことが許されます。
この日には、ストーンヘンジの巨石の間から昇る太陽を拝むため、世界中から訪れる観光客で賑わいます。
5-2. ドイツ
ドイツでは、夏至の夜にはたき火を囲みながら、ビールや食事を楽しみます。伝統的なダンスや音楽の演奏も行われるとても賑やかなイベントです。
ドイツの夏至祭は、太陽の恵みに感謝し、農作物の豊穣を祈る行事として、古くから続いています。
焚き火は悪霊を追い払うと信じられており、盛大に燃やされるのが特徴です。
5-3. フランス
フランスでは、夏至の日には、「フェット・ド・ラ・ミュージック」(音楽祭)が行われ、全国各地で音楽を楽しむ一大イベントが開催されます。
プロ・アマ問わず、さまざまなミュージシャンが公園や街角で演奏し、町中が音楽にあふれる素敵なイベントです。
5-4. スウェーデン
北欧の国であるスウェーデンでは、夏至祭(ミッドサマー)は盛大にお祝いされます。
太陽の力が最も強くなる日を祝い、自然の恵みに感謝するこの夏至祭り。家族や友人と過ごし夏の訪れを祝いますが、クリスマスと並ぶ一大イベントというから、日本人にとっては驚きです。
イベントでは、メイポール(夏至柱)を立て、手作りの花冠を頭に乗せて柱の周りで伝統的なダンスを踊ります。
ピクルス、サーモン、ハーリング、ジャガイモなどの伝統料理も楽しみの一つです。
5-5. ノルウェー
ノルウェーでは夏至祭のことを”サンクトハンス(St. Hans)”と呼び、6月23日に開催されます。
これは、23日がキリスト教の洗礼者ヨハネの生誕日(6月24日)の前日だからです。
”Hans”は”Johannes(ヨハネス)、つまりキリスト教の洗練者ヨハネの省略語のことで、夏至祭はヨハネの生誕祭という意味合いを持つのです。
この日は、家族や友人とたき火やバーベキューを囲んでゆっくりと過ごします。
海岸沿いでは大きなたき火が焚かれますが、これは悪霊を追い払うためとされます。
5-6. デンマーク
デンマークもノルウェーと同じくように、キリスト教の洗礼者ヨハネにちなみ、「聖ハンスの夜」と呼ばれるイベントで国中が盛り上がります。
ただし、デンマークの夏至祭は、他の北欧諸国とは少し違う意味合いあるというのが興味深いでしょう。
デンマークの夏至祭は、悪霊や魔女を追い払う儀式を由来とするのです。
たき火の周りでは歌やダンスが行われ、家族や友人と共に過ごします。
5-7. 中国
中国では、夏至の日は豊作を祝う日として祝日に設定されています。
日本では、夏至は田植えを終えて豊作を「願う」意味合いが強いですが、中国ではちょうど小麦の収穫時期にあたるため豊作を「祝う」のです。
さて、古くから北京では「冬至はワンタン、夏至は麺を食べる」という言い伝えがありますが、暑い夏には体を冷やしてしまう冷たい麺を食べても大丈夫、ということで夏至の日に冷たい麺料理を食べる風習があるとか。
他にも、古代中国では、あせもの予防や体にこもる熱を発散させるため、扇子や白粉・口紅などを女性同士贈り合っていたことから、現在も女性同士で化粧品を贈り合う人もいます。
まとめ
夏至は、北半球において昼の時間が最も長くなる日であり、天文学的にも暦の上でも重要な意味を持ちます。
今年の夏至は6月21日(金)です。
冬至といえば「柚子湯」や「かぼちゃ」がよく知られていますが、夏至にも地域によっては特別な食べ物があります。
例えば、ちょうど田植えを終えるタイミングであることにちなみ、たこや半夏生餅が食べられます。他にも、夏を迎えるにあたって目にも涼しげな水無月や、暑い時期に力をつけたり疲労回復によいとされる焼きさば、みょうが、冬瓜などがあります。
世界に目を向けると、太陽が沈まない「白夜」の現象が見られる北欧諸国を中心に、多くの地域で夏至祭が行われます。
夏至を過ぎると、梅雨を経て本格的な夏が始まります。
日本の伝統を楽しむことで、日々の生活に彩りを添えることができるでしょう。
<参考資料>
「半夏生さばの食文化」が文化庁100年フードに認定 大野市公式ウェブサイト (city.ono.fukui.jp)
よくある質問
[質問]今年の夏至はいつですか? |
[回答]2024年の夏至は、6月21日(金)です。 |
[質問]夏至の日とはどういう意味ですか? |
[回答]夏至は、一年の中で最も日照時間が長い日を指します。「夏至」という言葉は「夏に至る」という意味を持ち、夏の本格的な始まりを告げるものです。この時期から気温が上昇し、暑さが本格化していきます。 |