INDEX
1.おみくじとは?
1-1. 神聖な「くじ」
「おみくじ」はひらがなで書くことが多いですが、みくじ(「神くじ」「御くじ」)に丁寧な表現として「御」をつけた、おみくじ(「御神くじ」「御御くじ」)が成り立ちです。
1-2. おみくじは占いの一種
おみくじとは、運勢や吉凶を占うものです。
占いとは、御神慮(ごしんりょ)を仰ぐ信仰の表れともいえます。
古来、神々の声を受け取る特別な才能のある職能者が、あらゆる物事の流れを感じ取って予言したり、神々と直接交流して受け取った「お告げ」を人々に届けていました。
こうした特別な能力に頼らずして神様のお告げをいただくのが、占いです。
おみくじもこうした占いの一種です。
例えば、小正月などにその年の作柄や天候を占う粥占神事(かゆうらしんじ)や、神社の祭事に奉仕する頭屋(とうや)などの神役を選ぶ際に、御神慮に適う者が選ばれるよう「くじ」を引いて決めることなど、古くから続けられてきました。(出典:おみくじについて | 神社本庁)
1-3. 神社の定番「和歌おみくじ」
神社のおみくじには「和歌」が描かれていることが多いですが、これは「歌占(うたうら)」を起源とします。
日本では古来、神様は和歌で人間にお告げを示すと考えられていました。
これが歌占の始まりであり、時を経て室町時代には形式が変わり、和歌の書かれた短冊を弓に吊るしそこから1枚引くという形になり、江戸時代には「歌占本」が大流行しました。
一方、時を同じくして、江戸時代には中国から多様なおみくじが渡来してきました。
当時の中国と言えば流行の最先端。
神社の多くが、漢詩の書かれた中国風のおみくじを取り入れたといいます。
しかし、幕末の尊王攘夷思想から明治の神仏分離令という時代の流れで、神社には日本独自のおみくじをという機運の中で注目を浴び、今にその精神が引き継がれるのが和歌みくじです。
1-4. お寺の定番「漢詩みくじ」
お寺のおみくじの起源は、「元三大師百籤(げんさんだいしひゃくせん)」とよばれるものです。
これは、平安時代に天台宗延暦寺の高僧である良源(元三大師)が五言四句の漢詩百詩で運勢や吉凶を表したものです。
江戸時代初期になって、徳川家康に仕えていたことで名高い天海が、弟子とともに広めたといわれています。
この元三大師百籤を用いている代表的なお寺が、東京浅草の浅草寺です。
浅草寺では、筒から1 ~100の番号の書かれた棒を1本振り出し、その番号の引き出しをあけておみくじを1枚とります。おみくじには、良源が書いた五言四句の漢詩が書かれています。
ちなみに、良源が読んだ漢詩百詩のうち、30の詩は「凶」です。
1-5. 近年のおみくじは多様化が進む
おみくじには、定番を含め、多種多様な形があります。
1-5-1. おみくじの引き方
専用の筒を振って番号のついた棒を出し、その番号の引き出しを自分で開けておみくじを取り出す、もしくは授与所でその番号のおみくじを受け取るという、古典的な形式です。
その他、箱に手を入れて引くものも多く見受けられます。
最近では、おみくじを人形に詰めた可愛らしいおみくじもたくさんあり、それらは授与所で直接選ぶことができます。
他にも、魚のおみくじを釣り竿で釣り上げたりと、ちょっとした遊びをともなうおみくじも人気があります。
1-5-2. 用紙や形式、書かれてある内容
おみくじそのものも、個性豊かなものがたくさんあります。
おみくじと言えば、小さく折りたたまれて糊で封がされている和歌みくじはどこの神社でもお目にかかるものかと思います。古い仮名遣いが用いられていると、どこか趣を感じますね。
近年では、水につけると文字が浮き出るようなおみくじもあり、楽しみながらおみくじを引くことができます。
1-6. おみくじを引くのは初詣参拝者の半数以上
おみくじは、若い世代を中心に、初詣に行かれた方の半数以上がおみくじを引いています。
(出典:1200人に聞いてみた!今年のおみくじ、なに引いた? | マクロミルモニタサイト (macromill.com)
2.おみくじの運勢の正しい順番は?
2-1. 神社に直接聞いてみましょう
最も気になるおみくじの順番ですが、実は、公式な見解は存在しません。
神社本庁ではおみくじについて、
「おみくじ」は単に吉凶判断を目的として引くのではなく、
その内容を今後の生活指針としていくことが
何より大切なことといえます。
(出典:おみくじについて | 神社本庁)
と書かれています。
つまり、引いたおみくじを何度も何度も読み返しその内容を生活指針として心に留めることこそが最も大切なことであり、おみくじの吉凶だけを気にして一喜一憂するものではない、ということです。
おみくじと一口に言ってもいろいろな種類がありますので、自身が引いた順番が気になる場合は、神社で直接聞いてみるとよいでしょう。
2-2. 一般的な七段階のおみくじの順番
おみくじの順番に公式な見解はありませんが、吉凶が七段階に分かれているおみくじの順番は2つの考え方があります。
2-3. 「半吉」「平」などがあるおみくじも
おみくじの内容は神社によって異なり、近年では個性豊かなものがたくさんあります。
珍しいものでは「半吉」「平」「吉凶末分」「吉凶相交」などの吉凶があります。それぞれ考え方が違うので、おみくじの内容をしっかりと読み込みましょう。
なお、浅草寺のおみくじの順番は、大吉→吉→半吉→小吉→末小吉→末吉→凶となっています。
2-.4. 吉凶の割合はおみくじによって異なる
吉凶の割合が気になるというのは正直なところかと思いますが、おみくじによって異なります。
ちなみに、おみくじの由来となった「元三大師百籤」では、吉凶の割合は下図の通りになっています。
3.おみくじを引いて大切なこと
3-1. 吉凶の順番だけにとらわれない
おみくじにおいて大切なのは、吉凶の白黒や他と比べてよい悪いを判断する、ということではありません。
おみくじに影響を与えた中国の易占いでは、何事も極端までいくと反転するという「陰陽転化」という考え方があります。「陽極まれば陰生ず、陰極まれば陽生ず」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
つまり、凶が出た場合は、これ以上悪くなりようのない凶であれば今後は物事がよくなる、と考えることもできます。
また一方、大吉が出た場合、油断は禁物。最高の状態から後は下降傾向・・・と考えることもできます。
おみくじは単に吉凶の順番で一喜一憂するものではないということを、心に留めておきましょう。
3-2. おみくじを生活指針とし、自分を見つめる
おみくじの内容は、今後の生活指針としていくことが大切です。
他人からのちょっとしたアドバイスや戒めの言葉が身に沁みる、なんて心当たりのある方もいるでしょう。
引いたおみくじを何度も読み返し、自分自身の行動に照らし合わせてみてはいかがでしょう。
4.おみくじの正しい引き方は?
4-1. 参拝した後に引きましょう
おみくじは占い、つまりは神様からお言葉をいただくものです。
おみくじを引く前に、まずは手水舎があれば手水でお清めし、二礼二拍手一礼の作法で神様にご挨拶をします。
おみくじは、神様への拝礼の後に引くようにしましょう。
4-2. おみくじを引いたらよく読み込みましょう
おみくじを引いた後はその内容をよく読み、自身の状況と重ね合わせて、どのようにすればよいのか考え行動するようにしましょう。
5.引いた後、おみくじはどうしたらいい?
5-1. 神社で結ぶ
引いた後のおみくじは、神社で結んでも持ち帰ってもどちらでも大丈夫です。
神社で結ぶ場合は、各神社所定の場所に結びましょう。おみくじを結ぶのは、「神社と縁を結ぶ」という意味合いがあるといいます。
なお、境内の木々に結ぶことは、木々を痛めてしまう可能性がありますので、基本的にはマナー違反です。
5-2. 持って帰ってもよし
おみくじを何度も読み返したいという方は、持って帰って構いません。
財布や鞄に入れて大切に持ち歩いても、目につくところに貼っても、ファイルやお財布に入れて保存してもよいでしょう。
5-3. 一年ほどでお焚き上げ
持って帰ったおみくじも、一年ほどでお焚き上げしてもらうか、おみくじを引いた神社に結びに行きましょう。
遠方の場合は近場の異なる神社でも構いませんが、神社のおみくじをお寺に結ぶ、ということは避けましょう。
6.おみくじは何度引いてもいい?
6-1. 回数に決まりはありません
おみくじを引いた後、もう一回引きたいという思いになってしまうこともあると思います。
おみくじで大切なことは、単純に吉凶の結果ではなく、おみくじの内容を深く理解し、自身と向き合うことです。せっかくの神様からのお言葉ですので、一度引いたおみくじは、ありがたく受け取ってみてはいかがでしょう。
ちなみに、「おみくじの引き直しは3回まで」という俗信があります。
諸説ありますが、江戸時代に出版された「天満宮六十四首歌占」という歌占本で、1~4の番号がかかれた棒を3回振り、順番に出た組み合わせで占いをするというものがありました。
また、辻占(つじうら)では3回引いて出た言葉をつなげて自分なりに解釈するような遊びがありました。
こうしたことから、3回まで、ということが定着したという見方があります(鈴木(2017)「ニッポンのおみくじ」p. 156 )
いずれにせよ、おみくじに何度もひいてはいけないという厳格な決まりはありません。
6-3. おみくじに有効期限はない
おみくじは中国の易占いの影響を受けており、易占いでは変化する「いま」を見ます。おみくじも「いま」からみた神様のお言葉ですので、決まった期限はありません。
一般的に神社でいただいたお神札やお守りは、一年で神社にお戻しをします。おみくじもそれにならって一年を目安に戻すのもよいかと思います。
7.まとめ
誰もが一度は引いたことがあるであろうおみくじ。
最も大切なことは、単純に吉凶の結果で一喜一憂するのではなく、おみくじに書かれた内容をしっかりと読み、自身の指針とすることです。
最近では可愛らしく楽しめるおみくじがたくさんあります。
参拝の際、何か悩み事がある場合など、おみくじを引いて神様の言葉をいただいてみてはいかがでしょう。
<参考資料>
おみくじについて | 神社本庁 (jinjahoncho.or.jp)
鈴木麻矢(2017)「ニッポンのおみくじ」 グラフィック社
平野多恵(2017)「神さまの声をきく おみくじのヒミツ」河出書房新社
よくある質問
[質問]おみくじの順番は? |
おみくじの順番については神社によって異なります。一般的には、大吉→吉→中吉→小吉→末吉→凶→大吉、もしくは、大吉→中吉→小吉→吉→末吉→凶→大吉です。 |
[質問]おみくじは何度引いてもいいですか? |
何度引いても大丈夫です。しかし、大切なのはおみくじを引いて大切なのは吉凶の結果だけではなく、引いたおみくじの内容をよく読んで自分の生活の指針にすることです。 |
[質問]おみくじに有効期限はありますか? |
おみくじには決まった有効期限はありません。 |