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このはな手帖

【そうだったのか!】おはぎとぼたもちの違いは?食べる時期、名前の由来を紹介!

【そうだったのか!】おはぎとぼたもちの違いは?食べる時期、名前の由来を紹介!

和菓子の定番、おはぎ。

和菓子は小さいながらも季節感があり、目でも舌でも私たちを楽しませてくれますが、おはぎもその一つ。

ところで、年に2度あるお彼岸。その時期になると、おはぎをおうちで作ったり、店頭で見かけたりするかもしれません。

実はこの「おはぎ」。「ぼたもち」とも呼ばれることがあることをご存知でしょうか。

そもそも、ぼたもちっておはぎのことなの?と驚いた方もいるかもしれません。

おはぎとぼたもち、見た目はとっても似ているため、「おはぎとぼたもちって同じもの?」「違いはあるの?」とあらためて聞かれると答えに詰まる・・・方は少なくないはず。

ここでは、おはぎとぼたもちの違いについて解説していきます。

知られていそうで意外と知られていない、おはぎとぼたもちの違い。食べるときにちょっと人に話してみたくなる、そんなお話です。

日本の四季の移ろいを感じられる和菓子。少し深堀すると、より一層おいしく楽しくいただけるかもしれません。

1.おはぎとぼたもちは同じもの?

おはぎ

1-1. お米と小豆から作るという意味では同じ

「おはぎ」と「ぼたもち」。

同じだけど違う、違うけど同じ。つまり、二つはとっても似ています。

おはぎもぼたもちも、炊いたもち米やうるち米を丸めてあんこで包む、という意味では同じです。

2.おはぎとぼたもちの違いは?

おはぎとぼたもちは、両方ともお米を丸めてあんこを包む和菓子です。また、ともにお彼岸のお供え物の定番ともいえるでしょう。

しかし、おはぎとぼたもちは食べる時期が異なります。その違いから、名前の由来・あんこの種類など、伝統的にみると実はおもしろい違いがあるのです。

地域や家庭によって差があったり、好みによってアレンジしたり、現在ではおはぎとぼたもちに明確な違いがなくなってしまっている場合もありますが、ここでは一般的な違いをまとめました。

2-1. 食べる時期と名前の由来

おはぎは秋(萩)、ぼたもちは春(牡丹)

おはぎとぼたもち。実は、食べる時期が違い、それぞれの名前はその時期に咲く花に由来しています。

古くは江戸時代、大阪の医師である寺島良安により編纂された「和漢三図絵」には、

牡丹餅および萩の花は形、色をもってこれを名づく

と記されています。

萩の花

おはぎを食べるのは、秋のお彼岸。その名の通り、萩(はぎ)の花の様子に似た和菓子です。

秋の七草の一つである萩は、秋の訪れを感じさせる花で、控えめで上品な美しさを持っています。

牡丹の花一方、ぼたもちを食べるのは、春のお彼岸です。そして、春に咲く牡丹(ぼたん)をイメージしています。

春の花である牡丹は華やかで豪華な印象を持ち、春の訪れを象徴する花として知られています。

2-2. あんこの種類

おはぎはつぶあん、ぼたもちはこしあん

おはぎにはつぶあん、ぼたもちにはこしあんが使われることが多いです。

使うあんこの種類が違うのは、食べる時期に深く関係しています。

粒あんをつかったおはぎ

小豆の収穫時期は秋。収穫して間もない小豆は皮まで柔らかく、皮ごと潰して食べられるため、秋のお彼岸に食べるおはぎにはつぶあんが使われていました。粒の感じが残るつぶあんが食感のアクセントになり、秋の風味を象徴すると考えられています。

そして、おはぎの表面に小豆の皮が浮かぶ様子が、萩の小さな花々に似ているとも。そのことから、中世の宮中の女官などの言葉遣いで「おはぎ」と呼ぶようになりました。

季節感や伝統的な風味を表現するため、あんこを使い分ける和菓子の繊細さを垣間見ることができます。

こしあんをつかったぼたもち出典:農林水産省Webサイト(ぼた餅 栃木県 | うちの郷土料理:農林水産省)

秋に収穫された小豆は、ぼたもちを食べる春には皮が固くなってしまうため、皮を取り除いたこしあんが使われます。春の華やかさや繊細さを表現するために、滑らかなこしあんが好まれるともいわれています。

実際のところ、今では保存技術の発達や品種改良により、春でも皮のまま使うことができる小豆があるので、現在では必ずしも使い分けられているわけではありません。

2-3. 形状

おはぎは丸型、ぼたもちは俵型

おはぎとぼたもちの形状は特に明確な区別はなく、地域や家庭、店舗によって様々というのが実際です。

しかし、伝統的な製法では、それぞれの和菓子が関連する季節や文化的な意味合いに基づき、おはぎは萩の花のように小ぶりで俵型に、ぼたもちはその名前の由来である牡丹の花のように大きな丸い形にすることがあります。

3.お彼岸に食べるのはなぜ?

彼岸の時期に咲く彼岸花

「お彼岸」とは、日本の仏教文化に由来する行事です。年に2度あり、春分の日と秋分の日を中心とした一週間を指します。

春のお彼岸は、新たな始まりや生命の再生を象徴します。秋のお彼岸は、収穫の豊かさや感謝の気持ちを表します。

このお彼岸の期間には、仏教において先祖を供養し、墓参りをする特別な時期とされています。

春のお彼岸にはぼたもちを、秋のお彼岸にはおはぎをお供え物とされることが一般的です。

3-1. ご先祖様へのお供え物として

仏壇

ぼたもち(春のお彼岸)、おはぎ(秋のお彼岸)は、それぞれの季節の変わり目を象徴する食べ物です。

ぼたもちの「牡丹(ぼたん)」は春の花、おはぎの「萩(はぎ)」は秋の七草のひとつであり、これらの名前が和菓子に使われれることで季節の変化と自然への感謝を示します。

また、もち米を主原料とするおはぎとぼたもちは、豊穣と繁栄の象徴としても捉えられています。

農作業をはじめる春のお彼岸にぼたもちを、収穫の時期である秋の彼岸におはぎを作ることで、その年の豊穣を神様に感謝し、家族や家系の繁栄を願う意味があるとされています。

季節の恵みともいえる、おはぎとぼたもち。これらをお供えすることは、祖先への敬意と感謝の気持ちを表すものといえるでしょう。

3-2. 小豆で無病息災を祈るため

あずき

日本の伝統的な文化の中で、小豆(あずき)は「無病息災」を願う象徴とされています。

これは、小豆の美しい赤い色に由来します。

日本では古来より、赤色は邪気を払い、災いを避ける力があると考えられてきました。このため、小豆は災いを遠ざけ、健康や長寿を願う際に用いられることが多いのです。

4.春はぼたもち、秋はおはぎ。では夏と冬は?

春はぼたもち、秋はおはぎ、と名前を変える和菓子ですが、あまり知られていませんが、夏と冬もそれぞれ別名があります。

おはぎ(以下、ぼたもちもまとめて「おはぎ」とします)を作るときには、すりこぎで米を潰して作ります。

つまり、餅を臼でつくときの“ペッタンペッタン”といった音が出ません。

このことからくる、言葉遊びです。

4-1. 夏「夜船」

夜に着岸する船

おはぎはお米をすり潰して作ります。餅を作るときのように、臼でつくときの“ペッタンペッタン”といった音が出ませんので、近隣の住人でもいつおはぎを“ついた”のががわかりません。

このことから、夜は暗くて船がいつ“着いた”かわからない夜船になぞらえて、夏のおはぎを「夜船(よふね)」と呼ぶようになりました。

4-2. 冬「北窓」

おはぎをいつ“ついた”のががわからないことから、「つき知らず」が転じて「月知らず」。

冬は北の窓から月が見えないので、「北窓」と呼ばれるようになりました。

5.他にもある、怖い!?別名は?

すり潰すための器

5-1. 半殺し・皆殺し

おはぎは、蒸したもち米とうるち米を潰して丸め、あんこで包んで作ります。

このお米のつぶつぶが残る程度に潰した状態を「半殺し」、粒を残さずに全てすり潰した状態を「皆殺し(全殺し、本殺し)」と呼ぶのです。

一見すると何とも物騒な別名ですが、これはおはぎの呼び名の方言であり、東北の一部や、長野・新潟・群馬などで用いられています。

また、徳島県那賀町では、おはぎは「皆殺し」の名で郷土料理として親しまれています。

地域によっては、お米のすり潰す程度ではなく、あんこによって同じ表現をすることもあり、つぶあんは「半殺し」・こしあんは「本殺し」と呼ばれることもあります。

6.大福やあんころもちとの違いは?

6-1. あんころもちの中身は「餅」あんころもち

おはぎとぼたもちとあんころもちは、中身、つまり米の部分の状態が異なります。

おはぎやぼたもちは、中身は蒸したもち米をそのまま、もしくは好みによって少し潰したものを丸めるのに対し、あんころもちの中身は、もち米をすべてつき、米の粒感をなくした「餅」です。

6-2. 大福はあんこをもちで包む

大福

和菓子の定番の一つである大福。大福は、もとは「具材の入った餅」として作られたのが始まりでした。

つまり、おはぎとぼたもちの外側はあんこですが、大福の外側は餅です。同じような材料で作られますが、見た目は全く異なります。

7.まとめ

おはぎ

馴染みのある和菓子の代表ともいえる、おはぎ。

ですが、お彼岸に食べるのはおはぎ、ぼたもち、どっちだったかな?そもそも違いってあったけ?の疑問を解決してきました。

今では、ぼたもちとおはぎの呼び名を区別しない地域も少なくありませんが、食べる時期の違いによるもともとの両者の違いをまとめると以下の通りです。

ぼたもちとおはぎの違い一覧

現在は、おはぎをこしあんで作ったり、おはぎを丸い形で作ったりと、家庭や店舗によって実に様々なものがあります。おはぎとぼたもちの区別もされないことが多く、年中「おはぎ」と呼ぶこともあります。

お彼岸の時期だけでなく、日頃から親しまれているからこそ、好みによってその家の味が作られているのかもしれません。

最近では、和菓子屋ならぬ「おはぎ専門店」が登場し、進化系おはぎとして、色とりどりで目でも楽しめる、かわいらしく繊細なおはぎがたくさんあります。

おはぎとぼたもち、どっちがどっち、ということにこだわる必要はありませんが、その由来や違いを知ることで、日本の季節の美意識や風流を感じられるかもしれません。

 

<参考資料>

新谷尚紀「日本の『行事』と『食』のしきたり」2004年
和菓子の由来 | 全国和菓子協会 (wagashi.or.jp)
おはぎ 京都府 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
ぼた餅 栃木県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
半ごろし 長野県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
半ごろし 徳島県 | うちの郷土料理:農林水産省 (maff.go.jp)
お彼岸:おはぎは半殺し?皆殺し? | 一般社団法人 日本和食卓文化協会 (nihonwasyokutakubunka.com)

 

よくある質問

[質問]おはぎとぼたもちの違いは何ですか?
[回答]おはぎとぼたもちは、食べる時期が違います。おはぎは秋のお彼岸、ぼたもちは春のお彼岸に食べます。秋は「萩(はぎ)」、春は「牡丹(ぼたん)」というように、季節に咲く花をその名の由来とします。
[質問]おはぎはつぶあん、こしあんのどちらですか?
[回答]名前の由来からいえば、おはぎはつぶあんんです。表面に浮かんだ小豆の皮のつぶつぶが、おはぎの名前の由来となる秋の花「萩(はぎ)」の小さいな花に似ているともいわれています。ただし、現在ではつぶあん・こしあんの両方で親しまれています。
[質問]春のお彼岸にはぼたもちとおはぎのどちらを食べますか?
[回答]春のお彼岸には、ぼたもちを食べます。ぼたもちの名に由来する「牡丹(ぼたん)」は、華やかで豪華な花であり春の訪れを象徴します。

 

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