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鎮守の杜 プロジェクトとは
鎮守の杜再生プロジェクト
産泰神社では平成11年より、産泰神社西側(駐車場側)の鎮守の杜の復活を目指し、「鎮守の杜再生プロジェクト」を進めています。
鎮守の杜とは?
鎮守の杜とは、神社や神社の敷地を囲うように存在する森のことをいい、「社叢(しゃそう)」とも呼ばれます。
古来より日本人は、木や川など自然のあらゆるものに神様が宿ると考えており、木の生い茂った森は神様が降り立つ神聖な場所であると考えられていました。
そのため、人々は森に守られるように神社を建て、神様をお祀りしたといいます。
また、鎮守の杜は神社のお祭りなどを通じて、人々が集まる地域コミュニティの中心でもありました。聖域である鎮守の杜の木は切ってはならず、やむを得ず間引きする場合は神社のお祭りや神社の建材として、神様のために使われました。
このようにして、各地にある鎮守の杜はその地域の人々の手によって、原始より大切に守られてきたのです。
荒地になった鎮守の杜
しかし、明治時代の神道合祀令、近現代の戦争や国土開発などにより、多くの鎮守の杜は伐採され姿を消しました。
産泰神社の鎮守の杜も例にもれず、戦時中の用材確保のために多くの木々が伐採されました。
平成7年(1995年)荒地になってしまった鎮守の杜
昭和43年の地図 神門北側(左側)には鎮守の杜があった様子が伺える
環境保全・神社保全のため、本来の鎮守の杜再建を目指す
神社の防風林であった西側の鎮守の杜が荒地になってしまったことで産泰神社の社殿はむき出しになり、赤城山からの赤城おろしにさらされることとなりました。
この状況を改善すべく、当初から自然環境保全に関心を持っていた産泰神社の宮司が中心となり、社殿保全・自然環境保全を目的に、平成11年より鎮守の杜を復活させるべく「鎮守の杜再生プロジェクト」を立ち上げました。
潜在自然植生の森へ
産泰神社の鎮守の杜を再生するにあたり、当時横浜国立大学名誉教授であった宮脇昭先生が提唱する「潜在自然植生、混植・密植型植樹」の森として再生させることを目標としました。
潜在自然植生とは「一切の人間の干渉を停止したと仮定したときに現状の立地気候が支持し得る植生のこと」を意味します。
鎮守の杜は、原始のころより人々が神聖なものとして、木を一本切ることもたやすく許さず大切に守ってきた、まさに潜在自然植生の森です。
さらに土地本来の木々を「混植・密植」させて植えることで、自然災害にも強い森を再生します。
潜在自然植生の森は近年、森林の生態系保存の観点だけでなく、東日本大震災の時には津波の勢いを衰退させた強い防潮林として注目を浴び、維持再生に向けた運動が全国的に行われています。
森の土台の造成
平成11年、神社境内に向けて約240坪の荒地を、神職自ら重機を運転し、森の土台となるマウンド(土手)の造成を開始。シラカシなど約40本の植樹を行いました。
荒地に重機でマウンド(土手)を作る(平成11年)
マウンドにシラカシを植樹(平成11年)
北関東植生のシラカシを中心に植樹
その後、数年をかけて北関東で生息するシラカシなどの高木を中心に、ヤブツバキ・ヒサカキなどの中木・低木も混植。
平成13年までに計156本の植樹を行いました。
植樹した木
高木 | シラカシ、アラカシ、スジダイ、マテバシイ、クスノキ等 |
中木 | ヤブツバキ、サカキ等 |
低木 | ヒサカキ等 |
積雪で折れたクスノキ
なかには積雪や強風により倒れてしまった木もありました。それでも下草狩りや雪下ろしなど、細かな手入れにより木々は次第に成長していきました。
様々な種類の木を混植(平成12年)
しかし、苗木だけで本格的な森にするために木の本数が足りませんでした。
そこで考えたのは、公園で拾ったどんぐりからポット苗を製作するという方法でした。
どんぐりからポット苗を作る
ポット苗(イメージ)
シラカシやアラカシのどんぐりを公園で採取し、水につけ虫取りをしたのち、1つのポットに5~6個のどんぐりを入れ神社の敷地内でマルチングします。
半年ほどたつと芽を出し、芽が出たところで森に移植作業をします。
境内でのマルチングの様子
また、拾ってきたどんぐりはポット苗にするだけでなく、播種(はしゅ:直播き)も行いました。
播種の様子(平成14年)
その後も成木の植栽、どんぐりからのポット苗植樹を続け、平成16年までに植樹した苗木は1,000本、ポット苗は計1,100個以上にのぼります。
森の様子(平成14年)
森の様子(平成16年)
現在の鎮守の杜。社殿、神門ともに正面からは見えないほど森が成長している
森内部の様子(平成12年)
森内部の様子(令和5年)
神社参道正面(平成7年)
神社参道正面(令和5年)
これからの鎮守の杜
荒地だった鎮守の杜は、20年以上をかけてよみがえり、今では赤城おろしの強風や神前環境から産泰神社の社殿を守っています。
しかし森としてはまだまだ若い森です。
現在は植樹作業は行っていませんが、今後、何十年何百年と神社を守る森となるよう、日々管理を続けています。