INDEX
1. 神棚とは
1-1. 神棚とは、家や会社でお札をお祀りする「小さな神社」
神棚とは、神社で受けたお札をお祀りする場所をいい、家や会社における「小さな神社」といわれます。
神社の形をした宮形(みやがた)の中に、伊勢神宮のお札である神宮大麻や、自分の住んでいる地域の氏神神社のお札をお祀りし、神様の食事である神饌(しんせん)をお供えします。また、安産祈願や七五三の際に神社で受けたお札や、神社で受けた縁起物なども神棚にお祀りをします。
1-2. 神棚が各家庭に普及したのは江戸時代中期以降
神棚が各家庭に普及し、家庭内でお祀りをするようになった歴史はそれほど古いものではありません。神棚が使われるようになったのは鎌倉・室町時代と言われていますが、一般の家庭に広まったのは江戸時代中期以降のことです。
江戸時代の中頃、庶民の間では伊勢の神宮に旅行をし、伊勢のお札を地元に持ち帰る「お伊勢参り」が流行しました。やがて、地方からくる「お伊勢参り」の人々のお世話をしていた伊勢の御師(おんし)と呼ばれる人々が、さらに信仰を広めるべく、自ら様々な地域を巡業し伊勢のお札を頒布するようになりました。
こうして地方の人々にまで広まった伊勢のお札を家でお祀りするために、各家庭に神棚が普及したといわれています。
1-3. 現代では住居事情に合わせた様々な形の神棚が登場
安産祈願や七五三の際にいただいたお札を自宅でお祀りをする風習は、今日まで続いています。一昔前は、神棚はどの家庭にもあるものでした。
しかし近年、洋風の住宅が増えたことにより、神棚が設置されている家は少なくなっています。
その結果、洋風の家にも合うような形の神棚が現れるなど、それぞれの住居事情に合わせたお祀りをするようになっています。
2. 神棚を準備しよう
2-1. 神棚は神社や神具店、ホームセンターで購入できます
神棚は神社でいただける場合もありますが、神具店では大小さまざまな神棚が購入できます。
お札をお祀りする神棚(宮形)には、いくつもの種類があります。大きさや様々なデザインのものがありますので、部屋の広さや雰囲気にあわせて選びましょう。身近なところでは、ホームセンターでも購入できます。
⌘神宮会館
⌘伊勢宮中
⌘神棚の里
2-2. 神棚(宮形)の種類
2-2-1. お札立て(札箱)
簡易的な神棚がお札立てです。お宮を立てかける形のものや、壁にかけることができるお札立てもあります。
2-2-2. 一社造り
一社造りは、扉が一つのお宮の形をしている神棚です。シンプルでスペースを取らずにお札をお祀りすることができます。神明造り、大社造り、稲荷造りなど、神社建築の仕様に模したものもあります。
2-2-3. 三社造り
一社造りよりも豪華な造りの神棚です。三社の屋根が同じ高さの「通し屋根三社」と、中央のお宮だけ一段高く、より重厚な印象の「屋根違い三社」があります。
2-2-4. 五社造り・七社造り
三社造りよりもさらに豪華な神棚です。会社のオフィスなど、人が集まる広い場所でお祀りをするのに適しています。
2-2-5. 箱宮
北陸から北海道にかけてお祀りされている、お社が箱型の入れ物に入っている神棚です。平安時代の貴族の邸宅である寝殿造を取り入れたものとも言われています。
2-2-6. モダン神棚
現代の住宅事情にあわせた、新しいデザインの神棚です。部屋のインテリアを損なうことなくお祀りできることが特徴です。
2-2-7. 家具をアレンジした神棚
ニトリなど、家具店で購入できる棚をアレンジし、現代風の神棚として使用することもあります。
2-2-8. 神棚を使用しない場合
神棚は小さくても用意するのが理想ですが、お札をそのまま立てかけてお祀りしてもかまいません。
その場合でも、目線より高いロッカーやタンスの上などにお祀りをします。お祀りする場所をきれいに清掃し、白い紙などを敷いてお札をお祀りしましょう。テープや画鋲で壁につけることはやめましょう。
3. 神棚には何をお祀りする?
3-1. 神棚には神宮大麻・氏神神社のお札・崇敬神社のお札をお祀りする
神棚には、神宮大麻(伊勢神宮のお札)、氏神神社のお札、崇敬神社(氏神神社以外で自分の崇敬する神社)のお札をお祀りするのが基本です。
神宮大麻と氏神神社のお札は、氏神神社で受けることができます。
神社から受けたお札は、1年を目安に新しいお札にお取替えをします。お札を納める場合、お札をいただいた神社で納めるのが本義ですが、家の近くの神社で納めても大丈夫です。
3-1-1. 神宮大麻
神宮大麻は伊勢の神宮のお札です。
神宮でお祀りされている天照大神様は、日本人の総氏神様であることから、神棚の中心にお祀りをします。神宮大麻は、毎年9月17日に神宮で行われる大麻暦頒布始祭を経て各県の神社に届けられます。
3-1-2. 氏神神社のお札
氏神神社とは、自身が住んでいる土地の守り神である神社をいいます。
その土地に住む神様に守っていただいていることに感謝し、お祀りをします。自分の地域の氏神神社がどこかわからない場合は、各都道府県の神社庁に問い合わせてみましょう。
3-1-3. 自分が崇敬している神社のお札
崇敬神社とは、伊勢の神宮や氏神神社以外で自身の崇敬している神社をいいます。
安産祈願やお宮参りをした神社、家族で毎年お参りに行く神社のお札をお祀りしても良いでしょう。
3-2. 神様のお食事を準備しましょう
神棚には神様のお食事である「神饌(しんせん)」をお供えます。神饌を盛る食器である祭器(さいき)は、神具店やホームセンターで求めることができます。
3-2-1. 神饌の基本は「米、お酒、塩、水」
神様のお食事である神饌は、米、塩、水、お酒をお供えするのが基本です。米や塩は平瓮(ひらか)水は水玉(みずたま)、お酒は瓶子(へいし)と呼ばれる祭器を用います。
神棚にお供えするときは、三方(さんぼう)もしく折敷(おしき)と呼ばれる台に載せて神棚にお供えをします。
3-2-2. 特別な日は特別な神饌をお供えしましょう
正月や、神社で月ごとのお祭りである月次祭が行われる毎月1日、15日、また例祭日などの特別な日には、基本の神饌に加えて餅や野菜・果物、魚などもお供えをします。
また、季節の初物なども、一度神棚にお供えをしてから家族で頂戴するのもよいでしょう。
3-2-3. 神饌はできるだけ毎日替えましょう
神饌は、毎日取り換えることが基本です。ですが、毎日はなかなか難しい方は、神社での月並祭に合わせて毎月1日、15日に取り換えるのも良いでしょう。
何よりも大切なことは神様への崇敬の気持ちですので、無理なく続けることが大事です。
3-2-4. お供えした神饌は「おさがり」としていただきましょう
神棚にお供えした神饌は撤下品(てっかひん)といい、縁起のよいものとされています。神饌を交換したら、神様からの「おさがり」として、ありがたくいただきましょう。
3-3. 神棚の装飾品「神具(神具)」を準備しましょう
神具は、神様の依り代や権威を高める神棚の装飾品です。神具も神饌の祭器と同じく、神具店やホームセンターで購入できます。
3-3-1. 神鏡
神鏡は、神具の中で最も重要なものの一つです。
古事記において、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が日本列島に降臨する際、天照大神より授けられた三種の神器の一つが八咫鏡(やたのかがみ)であったことから、ご神体や神様の依り代として中央に置かれます。
3-3-2. 榊
榊は、神道において神聖な木といわれています。
そのため神社では、社殿や鳥居に取り付けたり、紙垂をつけてお供え物の「玉串」にしたりと、あらゆる場面で目にします。
榊は「堺の木」として神域と俗世間を分ける木とも、常緑樹でありいつも葉がついていることから「栄の木」として縁起のいい木とも言われています。
3-3-3. 真榊
真榊は、榊の枝に五色の布を垂らし、玉や剣が装飾されているものです。
五色の布は、古代思想である陰陽五行説に基づくものです。威儀具(いぎぐ)とよばれる、神様の権威を高める装飾の一つです。
3-3-4. そのほかの神具
その他、灯篭(とうろう)や篝火(かがりび)など、おおむね実際の神社を模した神具を設置します。
4. 神棚にはどのようにお祀りする?
4-1. お札は順番通りにお祀りしましょう
宮形の中には神宮大麻、氏神神社のお札、崇敬神社のお札を納めます。一社造りの場合、神宮大麻を先頭に、氏神神社のお札、崇敬神社のお札と三体重ねてお祀りします。
三社造りの場合は正面に神宮大麻、向かって右に氏神様のお札、向かって左側に崇敬神社のお札をお祀りします。
4-1-1. お札の薄紙は外しましょう
神宮大麻や一部のお札には薄い紙が巻かれていることがあります。こちらは外してからお祀りするようにしましょう。
4-2. その他のお札や縁起物は、神棚の隣にお祀りしましょう
安産祈願やお宮参り、七五三のご祈祷の際に受けたお札などは、宮形の横にお祀りをします。お正月の縁起物である熊手や破魔矢なども宮形の横にお祀りをします。
4-3. 神饌はお供えの数によってお供え方が異なります
4-3-1. 米、お酒、塩、水の順番にお供えしましょう
神道では、神様の正面である「正中(せいちゅう)」を尊ぶため、正面中央から順に米、お酒、塩、水の順番で並べていきます。
お供え物が偶数の場合は、神棚に向かって右側が上位となります。①のように横一列で並べるのが一般的ですが、場所によっては図②~⑤のようにお祀りします。なお、水と瓶子は、お供えしている最中は蓋を外しておきます。
※下記以外にも神饌の並べ方は諸説あります。
4-3-2. 特別な神饌は順番に注意しましょう
正月や神社の例祭日などの特別な日には、米やお酒に加えて餅や野菜・果物、魚などのお供えをします。
神饌は、中央から米→お酒→餅→魚→鳥→海藻(乾物)→野菜→菓子→塩→水の順番にお供えをします。
ですが、神饌をお供えする順番は非常に複雑ですので、基本の神饌の横にお供えするだけでもよいでしょう。
参考:神饌の順番の考え方(奇数の場合・偶数の場合)
4-3-3. 魚のお供えの仕方
魚をお供えする際は、魚の頭を正中に向け、なおかつ魚の腹の向きが神前に向くようにお供えします。そのため、正中より左右どちらかによってお供えの向きが変わります。
4-4. 神具を配置しましょう
神具は図のように配置しましょう。灯篭がある場合は一番外側に配置します。
出典:神棚のまつり方|神棚の里
4-5. 神饌の祭器や神具が揃えられない場合は
神社でお札を受けたものの、神饌をお供えする祭器や神具を準備できていない場合は、きれいなお皿やコップを使用し代用することも可能です。
普段使っているものではなく、新しいものを購入しましょう。100円均一やニトリなどの家具店で購入できるものでも大丈夫です。
神具は装飾品ですので、スペースがない場合などは無理して用意しなくても大丈夫です。
5. 神棚は家のどこにお祀りをする?
5-1. 神棚は家族が集う部屋の、目線よりも高い場所に設置しましょう
神棚は、清浄で明るく、かつ家族がお参りのしやすい場所にお祀りするのがよいとされています。
そのため、家族が集まるリビングにお祀りするのがよいでしょう。また、お祀りする際に神様を見下ろすことのないよう、目線よりも高いところに設置をします。
5-2. 仏壇のある部屋や、人があまり行かない場所は極力避けましょう
仏壇のある部屋は避けましょう。「神棚は居間」「仏壇は仏間」という言葉があるように、昔から別々の部屋にお祀りをされていました。
ワンルームなど、どうしてもかなわない方は、神棚と仏壇が上下に配置されたり、部屋の対の配置にならないようにしましょう。また、家の出入り口、トイレの近くなど、清浄とはいえない場所も極力避けましょう。
5-3. 正面が東・南向きに設置しましょう
神棚は一般的に正面が南向き、もしくは東向きになるように設置します。しかし部屋の事情から難しい場合は、方角を気にせずお祀りしても大丈夫です。
あくまで清浄に、丁寧にお祀りすることが大切です。
5-4. 神棚を一階にお祀りする際は「雲」と書かれた紙を貼りましょう
本来は神棚の上には何もないことが望ましいので、上階に人がいるのは避けた方がいいとされています。
しかし、リビングが一階にある場合や、マンションなどの集合住宅では難しい場合があります。その場合、神棚の上に「雲」と書かれた紙を貼ることで、神棚の上は空であるという意味になります。
5-5. 神社でお祓いをしてもらうこともできます
神棚を設置する場所は清掃し、清浄にしてから神棚を設置するようにしましょう。近くの神社に神棚奉鎮祭(神棚設置にあたってのお祓い)をしてもらうこともできます。
6. 神棚はどうやってお参りをする?
6-1. 神棚には毎日お参りをしましょう
神棚には、毎日お参りをしましょう。
朝は一日の無事を願い、夕方には今日一日を無事に過ごせたことの感謝の気持ちでお参りしましょう。
6-2. 神社と同じ「二礼二拍手一礼」の作法でお参りをしましょう
※神棚に向かう前に手と口を洗い衣服をただし、
心身ともに清めます。
1. 神棚に向かい、深いお辞儀を2回します。(二礼)
2. 拍手を2回します。(二拍手)
3. 最後にもう一度深いお辞儀をします。(一礼)
6-3. 特別な日には、丁寧なお参りをしましょう
次に、祝詞を上げる丁寧なお参り方法を紹介します。
こちらのお参りを毎日することが理想ですが、難しい場合は毎月1日、15日や特別な日に行いましょう。
※神棚に向かう前に手と口を洗い衣服をただし、
心身ともに清めます。
1. 祓詞奏上者(一家の主人や代表者)は神棚に向かい
深いお辞儀を2回したのち「祓詞」を読み上げます。
読み上げたのち、二礼二拍手一礼をします。
2. 神棚拝詞奏上者(一家の主人や代表者)は神棚に向かい
深いお辞儀を2回したのち「神棚拝詞」を読み上げます。
読み上げたのち、二礼二拍手一礼をします。
③最後にお辞儀をして、神棚の前から下がります。
7. 忌中のお祀り方
7-1. 忌中とは、近親者の死を悼み静かに過ごす期間
神道における「忌中」とは、人が亡くなってから50日間のことを指します。
同時に、近親者の死という穢れを外に広めないように、忌中は外部との接触を避けて身を慎み、静かに祈ることで故人の魂を清めると考えられています。
故人の死後50日に行われる五十日祭(ごじゅうにちさい)により、故人は家庭を守る祖先神になると考えられています。
7-2. 忌中には、神棚のお祀りを控え神棚封じを行いましょう
忌中においては神棚のお祀りを取りやめ、神棚の正面に半紙を貼ります。これを「神棚封じ」と言います。
神道では、古くから「死は穢れ」と捉えられていますが、この穢れを神様に見せないようするための儀式です。
神棚封じの手順
1. 神棚の神様にご挨拶をしてから、誰が亡くなったのかを伝えます
2. 神棚にお供えしているお供え物や榊を下げます
3. 神棚の扉を閉め、白い半紙を使用して神棚が隠れるようにします
※しめ縄がある場合は、しめ縄の上から半紙を貼ります
忌中の50日間は神棚を封印しておきましょう。
五十日祭の後に忌明けとなりますので、塩で身を清めて拝礼をし、半紙をはがしてお祀りを再開します。
8. まとめ
いかがでしたでしょうか。ポイントをまとめると
・お札は、神宮大麻、氏神神社のお札、崇敬神社の順番でお祀りする
・神饌は、米、お酒、塩、水の順番になるようにお供えする
・神饌は毎日取り換えるのがよいが、無理なく続けることが大切
・神棚は家族が集まる部屋の目線より高い位置に、南向きか東向きで設置する
・お参りの仕方は神社と同じ
・忌中には半紙を貼り、お祀りを遠慮する
となります。冒頭でも述べた通り、神棚にお札をお祀りすることは神様への感謝を表す日本古来から続く風習です。
神宮大麻や氏神神社のお札はもちろん、安産祈願や七五三などのお札も正しくお祀りし、家族の幸せを祈願しましょう。
<参考資料>
・西牟田嵩生編著(2005)「家庭の祭祀事典―神棚と敬神行事―」国書刊行会
・神社本庁監修(2012)「神社のいろは」扶桑社
・静岡木工|初めての神棚(神棚の基本について)
・服忌 | 神社本庁 (jinjahoncho.or.jp)
よくある質問
[質問]神棚にお供えするものは何ですか? |
[回答]神棚にはお神札の他、神饌や神具をお供えします。 |
[質問]神棚にお祀りするお神札とはなんですか? |
[回答]神棚には神宮大麻(伊勢神宮のお神札)氏神神社のお神札、崇敬神社のお神札をお祀りします。 |
[質問]神棚はどこで購入できますか? |
[回答]神棚は神具店の他、ホームセンターやWEB上でも購入できます。 |