INDEX
1.地鎮祭って何?
1-1.建設工事と建物の安全を願う儀式
地鎮祭とは、住居やビルなどの建築工事を始める際に、工事の無事進行・完了と、土地・建物が末永く安全で堅固であることを祈願するために行う儀式をいいます。
儀式では、まず初めに土地をお祓いし、土地の神様にその土地の使用を許可してもらう儀式を行なった後、神様に工事の安全をお願いします。
多くの場合は基礎工事が行われる前(着工前)の余裕を持った日程で行われるのが一般的です。
1-2. 日本の伝統儀式
地鎮祭の歴史は古く、7世紀の書物にはすでに地鎮祭を行っていたといわれ、日本書紀にも「新益京(藤原京)を鎮祭(しずめまつ)らしむ」との記述が見て取れます。。
また、現在の地鎮祭でも儀式の中で「鋤(すき)」や「鍬(くわ)」を使用しますが、9世紀に書かれた古語拾遺ではすでに「斎斧(いみおの)」や「斎鋤(いみすき)」について言及があり、現在と近い儀式が行われていたことがうかがえます。
1-3. 地鎮祭を行う人は8割以上
アンケートによると、現在でも8割以上の人が地鎮祭を行っています。
チューモンズー|地鎮祭をしない割合は何%?しないと何かデメリットがある?
ただし、一昔前は必ずおおなっていた地鎮祭も、現代では都会を中心に施主の意向によって行わないこともあります。
気になる方は施工業者に確認してみても良いでしょう。
1-4. 上棟祭は工事途中、竣工祭は完成後の儀式
地鎮祭と混合しやすいお祭りとして上棟祭(じょうとうさい)竣工祭(しゅんこうさい)があります。
上棟祭は、木造の建築工事の重要工程である「棟上げ」のタイミングで行う儀式です。今後の工事過程が無事安全に進むよう、建物に災厄が降りかからないように行うお祭りです。
竣工祭は、建物が完成したときに行われるお祭りです。建物が末永く丈夫で、そこに住む人の繁栄を祈願する儀式で、それぞれ地鎮祭とは異なるタイミングで行われます。
2. 地鎮祭の準備は何をする?
2-1. 施主が準備するものは「初穂料」
地鎮祭をするにあたって施主が準備するものは、神社に納める金銭である「初穂料」です。
その他の神社への連絡やお祭りの準備は、基本的に施工業者が行うため、施主が準備するものは特にありません。
2-2. その他の準備は施工業者が行う
神社への連絡は基本的に施工業者が行い、地鎮祭の準備(お供え物やしめ縄など)は施工業者もしくは神社が行います。そのため施主は、施工業者と地鎮祭の日程の調整だけ行うのが一般的です。
基礎工事が始まる前ならばいつでもよいので、一般的には工事開始日までに余裕をもって行います。
2-2-1.吉日じゃなくてもOK
いざ日時を決める際に悩むのが「大安などの吉日にするべきか」ということ。
しかし、吉日か否かは特に気にする必要はありません。仏滅や凶日とされている日でも地鎮祭をして問題はありません。
家族の中に気にする人がいる場合、考慮に入れる程度でよいでしょう。
2-2-2.(参考)吉日・凶日とされている日
地鎮祭の日取りはいつでも問題はありませんが、家族の中に気にする人がいる場合などは六曜(大安や仏滅)や、中国の北斗七星信仰に由来した十二直などで日を決めます。
2-3. お供え物の「お酒」と「お車代」は要相談
神様にお供えをする「お酒」や、神職に渡す「お車代」は、必ずしも準備しなくてはいけないものではありません。
ですが、地域の風習などもありますので、施工業者や神社にあらかじめ相談しておくと安心です。
2-3-1. お酒は二升組で準備する
二升一組で「奉献」とかかれたのし紙を巻くのが一般的
お酒のお供えを「奉献酒(ほうけんしゅ)」といいます。奉献酒を納める場合は、清酒二升組で準備するのが一般的です。
清酒の銘柄にこだわる必要はありません。一般的な銘柄で問題ありません。
奉献酒には「奉献」と書かれた熨斗紙をします。ほとんどの酒屋さんでは熨斗紙の準備がありますので、購入する際に尋ねてみましょう。
2-3-2. お車代は初穂料と別に渡す
お車代も必ずしも必要ではありませんが、準備する場合は初穂料ののし袋とは分けて準備しましょう。
お車代を入れる袋は、正式なのし袋でも白い封筒でも大丈夫です。表書きに「御車代」と書いて渡しましょう。
3.初穂料の準備方法は?
3-1. 相場は3万円程度
地鎮祭の初穂料の相場は3万円程度です。
初穂料は神社によって決まっているので、あらかじめ施工業者か神社に確認しておきましょう。
また、神社によってお供え物が含まれていない場合などもあります。事前に確認しておきましょう。
3-2. 初穂料はのし袋に入れる
地鎮祭の際に神社(神職)に納めるお金のことを初穂料(はつほりょう)といいます。
初穂料は、昔は神様に初穂(その年撮れた最初の稲)をお供えしたことに由来します。
地鎮祭の初穂料は、のし袋に入れて神職に渡します。
のし袋とは、あわびの縁起物である「のし」と、水引があしらわれた封筒をいいます。
3-3. 地鎮祭ののし袋は「紅白・蝶結び」の水引
地鎮祭で使用するのし袋は、水引が「紅白・蝶結び」ののし袋です。
蝶結びの水引は「何度あってもよいお祝い」という意味を持ち、地鎮祭では蝶結びの水引を使用します。
一方、結び切りやあわび結びの水引は地鎮祭では基本的に使用しません。
結び切りの水引は結婚などの「一度きりのお祝い」で使用するため、「何度あってもよいお祝い」である地鎮祭では使用しません。
3-4. のし袋は文房具店やコンビニ、100円均一で購入する
のし袋は文房具店の他、コンビニやスーパー、100円均一やAmazonなどのネットショップで購入できます。
文房具店の比較的高価なのし袋は丁寧さが伝わりますが、地鎮祭においてはのし袋の金額や豪華さはそれほど気にする必要はありません。
コンビニや100円均一で購入できるのし袋でも問題ありません。
3-4-1. 白封筒はなるべく避けましょう
一般にのし袋の代用として白封筒を使う場合がありますが、なるべく避けましょう。
地鎮祭はあらかじめ日取りが決まっているものですので、どのような形でものし袋を準備しておくことがベターです。
どうしても、という場合のみ白封筒を使用しましょう。
4. のし袋の書き方は?
のし袋には、紙幣を入れる中袋と、それを包む上袋があります。
4-1. 上袋には表書きと施主の氏名
上袋の上段には表書き「初穂料」もしくは「玉串料」と記入します。どちらでも問題ありません。
上袋下段には施主の氏名を記入します。家族で名字だけでもOKです。
自宅の地鎮祭などでは、基本的に家族の代表として世帯主の名前を記入しますが、家族で連名をしたい場合は世帯主以外は下の名前だけ書きます。
どちらで書いても大丈夫です。
4-1-1.夫婦での連名は施主から
夫婦での連名は施主を中心に記載します。
親子や兄弟で連名にする場合は、年上が左になるように記載します。
4-1-2.会社の場合は会社名か代表者
会社で出す場合は、代表者の名前で準備するのが一般的です。
その場合、会社名・肩書を右上に記入し、中央に代表者名を記入します。
4-1-3. 3人以上の場合は「外一同」
3人以上で連名する場合は施主の名前の横に「外一同」「他家族一同」「他職員一同」等と記載をします。
4-2. 中袋には金額と住所氏名
紙幣を入れる中袋には、表に金額を、裏には住所氏名を記入しましょう。
4-2-1. 表には旧漢字の数字で金額を記入
金額は表面の真ん中に漢字で記入します。通常の漢字で記入しても間違いではありませんが、一般的には旧漢字の数字で記入します。
なお、数字の最後に「也」を付ける場合がありますが、付けなくても問題ありません。
4-2-2. 裏には住所と氏名を
中袋の裏には住所と施主の氏名を記載します
4-3. 中袋が無い場合は裏に住所氏名を書く
のし袋によっては上袋のみで中袋が無いものもあります。
その場合、金額は記載せず、表書きと裏には住所氏名のみを記載します。
4-4. 紙幣は新札・肖像画が正面、上向き
中袋に入れる紙幣は、基本的に新札を使います。どうしても準備できない場合は綺麗な紙幣を使いましょう。
紙幣を入れる際は、肖像画が正面上向きに来るように入れます。
5. 地鎮祭の際の服装は?
5-1. ラフすぎない服装で
地鎮祭に参列する際の服装は特に決まっていません。特に自宅の地鎮祭では私服で参列する人がほとんどです。
ただし、祭典では玉串拝礼など神様にお参りする儀式がありますので、ハーフパンツやサンダルなどラフすぎる格好は避けましょう。
男性ならジャケットや襟付きのポロシャツにチノパン、女性もそれに準じた落ち着いた服装で臨むようにしましょう。
5-2. 会社の地鎮祭ではスーツが基本
会社の地鎮祭などの場合は、会社の責任者などが代表して参列することが一般的です。
その場合はスーツや制服などで参列する必要があります。
6. 地鎮祭当日の流れや施主のやることは?
6-1. 当日の式の流れ
地鎮祭の流れは以下の通りです。
開式の辞 | 地鎮祭を始める旨を告げます。 |
修祓 | 神職が神前で祓詞(はらえことば)を奏上し、大麻(おおぬさ)で祓い清めをします。 |
降神の儀 | 神様を地上(神籬:ひもろぎ)にお迎えします。 |
献餞 | 神様に神饌のお供えをします。 |
祝詞奏上 | 神職が神前で工事の安全を願う祝詞を奏上します。 |
四方祓 | 敷地の四隅と中央をお祓いし、土地の安全を願います。 |
地鎮の儀 | 施主と施工者、設計者が初めてその土地に手を付ける儀式です。 まず設計者は忌鎌で草を刈る所作をし(草刈初の儀)、次に施主が忌鍬の儀で盛砂に穴を作ります。(穿初の儀)最後に施工業者が忌鋤で土を掘り起こします。 |
玉串奉奠 | 神職、関係者が玉串を神様に捧げ、拝礼をします。 |
撤饌 | 神饌に蓋をして、お供え物をお下げします。 |
昇神の儀 | 神籬にお迎えした神様を送り出します。 |
退下 | 祭場から神職が退出します。 |
6-2. 準備は施工会社と神社が行う
地鎮祭当日は、基本的には施工業者と神社が準備をします。
四隅に斎竹(竹)を立て、注連縄を張り神饌(お供え物)をお供えします。
6-3. 施主が行うのは「穿初の儀」と「玉串奉奠」
地鎮祭の中で施主が行うのは「穿初の儀(うがちぞめのぎ)」と「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」です。
やり方は式の前の打ち合わせで神職から教えてもらえますが、本番で焦らないようにあらかじめ予習しておけば安心です。
6-3-1. 穿初の儀のやり方
① 神職もしくは司会から名前を呼ばれたら正面に出て神職に一礼し、鍬(忌鍬)を受け取ります。
② 鍬を持ったまま盛砂の場所まで進みます。
③ 「エイ、エイ、エイ」の掛け声とともに三回鍬を入れ、盛砂を崩していきます。
④ 鍬を神職に返し、自席に戻ります。
6-3-2. 玉串奉奠のやり方
① 神職もしくは司会から名前を呼ばれたら正面に出て神職に一礼をし、玉串を受け取ります。
② 玉串を持ったまま、神前へと進み、軽く一礼をします。
③ 玉串の根元が神前に向くように、正面の台の上にお供えします。
④ 二礼・二拍手・一礼の順に拝礼をします。
⑤ 最後に神前に向かって軽く一礼をして、自席に戻ります。
参考:玉串拝礼のやり方
6-4. 初穂料は式の前後で渡す
準備した初穂料は、神前にお供えをするため地鎮祭の前に神職に渡すのが一般的ですが、式のおわりに渡す場合もあります。
地域によっても渡すタイミングが異なる場合がありますので、当日施工業者や神職に確認をしましょう
7. 地鎮祭が終わったら何をする?
7-1. 食事会は行わないのが一般的
一昔前は地鎮祭が終わると、神職や施工業者を招いて食事会をすることがありました。
しかし現代ではほとんどなく、神社や施工業者とよほどお付き合いが無い限り、地鎮祭が終わり次第解散になるのが一般的です。
無事に祭典が終わったら神職と施工業者、参列者に挨拶をする程度でよいでしょう。
7-2. 近隣への挨拶
地鎮祭の終了後は、これから工事が始まることと、工事の騒音や振動などで迷惑をかけることを踏まえ、近隣に挨拶回りをすることがあります。
施工業者と一緒に両隣2軒、向かい3軒、裏3軒回るのが一般的ですが、回る箇所は立地によってまちまちですが、この際の手土産は、施主が500円~1,000円程度のタオルを準備しておくのが一般的です。
挨拶回りは施工業者と回ることもあるので、事前に相談しておくと安心です。
8. まとめ
いかがでしたでしょうか。
地鎮祭は家を建築する際に行われる伝統的な儀式の一つで、かならずしも行わなければいけないものではありません。
しかし、地鎮祭に家族で参加すること自体も良い思い出になる事でしょう。
以下、地鎮祭と初穂料の準備の仕方のポイントです。
・地鎮祭は工事の安全と建物の安全を願う伝統儀式
・施主が準備するものは「初穂料」と必要に応じて「奉献酒」「お車代」
・初穂料は「紅白・蝶結び」の水引のついたのし袋に入れる
・地鎮祭の服装は「カジュアル過ぎない」ように注意
・儀式で施主が行うのは「穿初の儀」「玉串奉奠」
・地鎮祭が終わったら近隣の人に挨拶をする
以上となります。
家を建てる経験は一生のうちに何度もあるものではなく、地鎮祭に参加する機会はだれしも多くないものです。
慣れている人も決して多くないので、しっかり準備して臨みましょう。
<参考資料>
神社本庁「神社のいろは」2013年,扶桑社
茂木貞純・沼部春友「神道祭祀の伝統と祭式」2018年,戎光祥出版
國學院大學日本文化研究所「神道事典」1994年,弘文堂
[質問]地鎮祭とは何ですか |
[回答]地鎮祭は工事の安全と建物の安全を願う儀式です。 |
[質問]地鎮祭に際して施主が用意するものは何ですか |
[回答]施主が用意するものは「初穂料」のみです。必要に応じて「奉献酒」や「お車代」の準備をします。 |
[質問]地鎮祭で使うのし袋はどのようなものですか |
[回答]地鎮祭で使うのし袋は「紅白・蝶結び」の水引のついたのし袋です。 |