INDEX
1. 御霊前(香典)とは?
1-1. 故人へのお供えのための金銭
「御霊前」とは、お通夜や告別式の際、故人にお供えをするための金銭をいいます。
お供えはどの宗教や宗派でも行われますが、名称や細かな意味合いが異なります。
そのため、どの宗教によって葬儀が行われるかあらかじめ把握し、それぞれに合わせた形で準備をする必要があります。
1-2. 宗教で名称や意味が異なる
故人に対するお供えの金銭を差す名称や意味は、宗教や宗派によって異なります。
御霊前を準備する際には、それぞれの宗教宗派にあわせた表書きをする必要がありますので
事前にどの宗教で葬儀が行われるか、確認しておきましょう。
なお一般的に「香典(こうでん)」という言葉を使いますが、香典は仏教の言葉で、仏教式の葬儀でのみ使用する名称です。
2. 御霊前はいつ必要?
2-1. お通夜もしくは告別式
御霊前は、お通夜もしくは告別式で故人のご遺族に渡します。
お通夜は、亡くなった翌日か翌々日の夜に執り行われる儀式であり、家族や親戚、特に親しかった友人が故人と最後の夜を過ごします。
告別式はお通夜の後に行う儀式で、会社関係者や知人・友人などが集まり、故人と最期の別れをします。
そのため、多くの人は告別式で御霊前を持参します
ですが、近年はお通夜のみに参列する、というケースも増えていますので、その際はお通夜に持参しても構いません。
2-2. 両方参列の場合はお通夜で
お通夜・告別式両方に参列する場合は、お通夜の際に持参するのが一般的です。
その場合、告別式は受付での記帳のみで大丈夫です。
2-3. 両方に持参はNG
お通夜と告別式両方に持参することもマナー違反です。
二度渡してしまうことで「不幸が重なる」ことを意味し、ご遺族の失礼にあたります。
また、訃報を聞いてすぐの弔問時に御霊前を渡すのは「亡くなることを予想していた・準備をしていた」という意味になってしまうため、マナー違反です。
お通夜、もしくは告別式のどちらかに持参しましょう。
3. 御霊前の不祝儀袋はどのように購入する?
3-1. 購入は仏具店やコンビニ、amazonでも
御霊前を入れる袋を「不祝儀袋(ぶしゅうぎぶくろ)」といいます。
一般によくいわれる「香典袋」も不祝儀袋の一つです。
祝儀袋は、仏具店や文房具店・コンビニ・amazonなどのWEBサイトで購入することができますが、コンビニでは簡易的な不祝儀袋しか取り扱いが無い場合もあります。
必要になったら、あらかじめ余裕をもって準備をしましょう。
3-2. 宗教にあった不祝儀袋を選ぶ
御霊前を入れる不祝儀袋は、宗教・宗派によって異なります。
異なった宗教の御霊前を用意してしまうと、場合によっては失礼にあたりますので注意しましょう。
なお、水引はどの宗教においても「結び切り」の水引を使用します。
各宗教の不祝儀袋
3-3. 白封筒は極力選ばない
御霊前で白封筒は極力使用しないようにしましょう。
無宗教での葬儀などでは白封筒で納めても良いとされる場合もありますが、あくまで簡略的なものです。
不祝儀袋はコンビニでも簡単に手に入りますので、トラブル回避のためにも、専用の不祝儀袋を準備しておいた方が無難です。
4. 御霊前の書き方は?
4-1. 外袋は表書きと氏名を記入
4-1-1. 神道式の場合
神道の場合、上段に表書きである「御神前」「玉串料」「御霊前」などを記入します。
「御神前」「玉串料」「御霊前」「御榊料」はいずれも、故人に対するお供えという意味を持ちます。
下段には自身の名前をフルネームで記入します。
水引は、印刷のものと実際にひもの水引がかかったものがあります。
納める金額が5,000円程なら印刷、10,000円以上の場合は紐の水引がかかったものを選ぶのが目安です。
4-1-2. 仏教式の場合
仏教の場合、上段に表書きである「御香典」「御香料」「御霊前」「御仏前」などを記入します。
「御香典」「御香料」は、故人にお供えするお香の代わりの意味を持ちます。
なお、ほとんどの宗派では四十九日以前を「御霊前」四十九日以降に「御仏前」を使いますが
浄土真宗では人は亡くなるとすぐに成仏すると考えられており
成仏する前の状態を表す「御霊前」は使用しないという違いがあります。
下段には自分自身の名前をフルネームで記入します。
また水引は神道と同じく、納める金額が5,000円程なら印刷、10,000円以上の場合は紐の水引がかかったものを選ぶのが目安です。
4-1-3. キリスト教の場合
キリスト教式の場合、上段に表書きである「御花料」「御ミサ料」「御霊前」「忌慰料」などと記入します。
「御香典」「御香料」は、故人にお供えするお香の代わりの意味を持ちます。
中でも「御ミサ料」「御霊前」はカトリックのみ、「己慰料」はプロテスタントで使用します。
なおキリスト教では水引は不要です。
4-1-4. 無宗教・不明な場合
無宗教もしくは葬儀を行う宗教が分からない場合は、
無地の封筒に白黒の水引が印刷された不祝儀袋を使うのが無難です。
表書きは「御霊前」と書くのが無難ですが
浄土真宗などでは当てはまらないため、やはり事前に調べておく方が無難です。
4-2. 中袋は金額と住所氏名を記入
4-2-1. 表の金額は旧字の漢数字で記入
内袋の表には、納める金額を「旧字の漢数字」で縦に記入します。
また、端数が無いという意味の「也」の文字を末尾に着ける場合もあります。
「也」はつけてもつけなくても構いません。
4-2-2. 住所と氏名は裏に記入
裏には、中袋の左下に住所と氏名を記入します。
郵便番号を記入しても構いません。
なお、中袋にのり付けは必要ありません。
4-3. 連名の場合は、中央から
夫婦や家族、会社など組織の一員として葬儀に参列する場合、御霊前も連名で記入します。
一般に夫婦の場合、家族の代表として夫の名前のみを記載しますが、連名にする場合は夫の氏名を中央に書き、妻の名前を左に並べます。
会社の場合は目上の人の氏名を真ん中に記載し、以下左に氏名を並べます。
いずれの場合も不祝儀袋に記載するのは「三人まで」の氏名です。
それ以上の場合は「外一同」と記載します。
4-4. 会社名で出す場合、横書き(英語)の場合
4-4-1. 会社は代表の名前で
会社で御霊前を包む場合は、代表者名と、肩書を記載します。
なお、会社名義で御霊前を出す場合、会社名のみでの記入はしません。必ず肩書と、代表者の名前を記入するようにしましょう。
4-4-2. 横書き(英語)は縦書きかカナで
氏名が英語など横書きの場合、英語の縦書きもしくはカタカナで記載します。
ただし英語表記の場合、相手が読めない場合もありますので、トラブル回避のためにカタカナの方が無難です。
4-5. 中袋なしの場合は裏に金額を
不祝儀袋を購入すると、ほとんどの場合は中袋がついていますが
外袋のみの場合もあります。
その場合は、外袋の裏に住所と金額を記入します。
5. 筆記用具は何を使う?
5-1. 薄墨の筆(筆ペン)を使う
御霊前の不祝儀袋には、「薄墨」の筆を使うのがマナーです。
薄墨であれば筆ペンでかまいません。
これは、悲しみで力が入らず薄墨になってしまうという意味や、涙で墨が薄くなってしまうほど心を痛めている、
という意味合いから薄墨が使われるようになったといいます。
薄墨の筆ペンは、文房具店だけでなくコンビニでも購入できます。
5-2. 無い場合は黒のサインペンで
筆や筆ペンで書くのがマナーではありますが
どうしても薄墨の筆ペンが用意できない場合は、黒の筆ペンやサインペンなどを使用しましょう。
5-3. 細いペンや消えるペンはNG
一方、鉛筆やボールペン、消えるペンなどは使用しません。
鉛筆やボールペンは、あくまで簡易的な筆記具であると理解しておきましょう。
6.金額の目安は?
金額をいくら包むかについては、本来の意味では決まっていません。
故人にたむける線香や花などのお供え物の代わりとして、各々の気持ちを納めるものだからです。
とはいえ、周りと比較して少なかったり、逆に多すぎても先方が恐縮して困ってしまう場合があります。
相場を参考に、一緒に参列する人と相談して決めるのが良いでしょう。
6-1. 両親は10万円~、親族は1万円~が目安
金額の相場は、個人との関係性によって決まります。
親の場合は10万円、兄弟の場合は5万円、その他親族は1万円~が相場です。
なお、兄弟で参列する場合、金額を揃える場合もありますので、その場合は相談して決めましょう。
親族の御霊前の金額の目安
出典:典礼会館|香典の相場
6-2. 友人は5,000~が目安
勤務先や友人の場合は5千円~1万円が相場ですが、関係性によってはもっと多く包む必要性もあります。
ただし、故人と特に親しかったような場合は、表以上の金額を包むこともあります。
勤務先・友人・知人の御霊前の目安
6-3. 同じ立場の人と相談して決める
兄弟や共通の友人と葬儀に参列する場合、自分の方が御霊前が少ないなどのことがあるとばつが悪いだけでなく、遺族の方に気を遣わせてしまうこともあります。
そのため、同じ立場で葬儀に参列する人がいる場合は、あらかじめ金額を相談して決めていくのがベターです。
7. お金の入れ方と包み方は?
7-1. 新札はNG
中袋に入れるお札は、新札ではなく古いお札(折り目のついたもの)を入れます。
御霊前に新札を使わない理由は、予想しない突然のことで、新札を準備する暇がなかった、ということを意味します。
そのため神札でないからといって、破れていたり汚れがついているお札は使ってはいけません。
適度なお札が無い場合は、お札に折り目をいれて御霊前に入れることも可能です。
7-2. 肖像画は裏面、下向きになるように
お札を中袋に入れる際、お札の肖像画が裏面かつ下にくるように向きを揃えて入れます。
肖像画を裏向きに入れるのは、悲しみにくれて顔を伏せている、という意味といわれています。
7-3. 外袋は、上側が上に重なる
中袋に紙幣を入れたのち、外袋で中袋を包みます。
包み終えたのち、外袋の後ろは「上側」が「上」にかぶさるように重ねます。
下側が上にきてしまうと「ご祝儀袋」の折り方となり、お祝い事で使用されますので注意しましょう。
8. 御霊前の渡し方は?
8-1. 持ち運びは袱紗で
故人とご遺族に気持ちを伝えるための御霊前も、渡す前にしわがついてしまったら失礼にあたります。
御霊前は、袱紗(ふくさ)に入れて持ち運ぶようにしましょう。
袱紗は色によって使用できる場面が決まっており、葬儀などの弔事では
緑、灰緑色、灰青色、紺、藍、茶色、グレー、黒などを使用します。
なお、紫は慶弔時両方使用できますので、あらかじめ一つ準備しておくといざという時便利です。
8-2. お悔やみの言葉とともに渡す
御霊前を渡すときは、袱紗から御霊前を取り出します。
相手側に文字が読めるよう向きを変えてから、必ず両手で渡すようにしましょう。
お悔やみの言葉は、宗教によって使えるものと使えないものがあります。
宗教 | お悔やみの言葉 |
神道(神式) | 誠にご愁傷様です 御霊(みたま)のご平安をお祈り申し上げます など |
仏教(仏教式) | 故人のご冥福をお祈り申し上げます 誠にご愁傷様です お悔やみ申し上げます など |
キリスト教 | 天に召された故人の平安をお祈りいたします どうか安らかに眠られますよう など |
ただし、厳格に各宗教のルールにのっとったお悔やみの言葉を選ぼうとすると、普段使い慣れてない言葉に
かえって不自然になってしまうこともあります。
そのような時は難しく「大変でしたね」「とても悲しいです」など、気持ちを素直に伝えることが大切です。
そうすることで、故人にもご遺族にも、心からの弔意が伝わるものです。
9. まとめ
いかがでしたでしょうか。
御霊前は、それぞれの宗教によって書き方や意味が異なってきます。
ですが、ルールを守って用意をすれば、決して難しいものではありません。
そして何より、どのような宗教でも大切なのは故人とご遺族を想う気持ちです。
素直な哀悼の気持ちを伝えられるよう、マナーを守って御霊前を包むようにしましょう。
<参考資料>
「現代用語の基礎知識」編集部(2015)「日本のたしなみ帖 しきたり」自由国民社
晋遊舎ムック(2020)「日本のしきたりがまるごとわかる本」晋遊舎
典礼会館|香典の相場
よくある質問
[質問]御霊前の書き方は? |
[回答]御霊前は、表書き・名前・金額などを記入します。宗教・宗派によって書き方が異なります。 |
[質問]御霊前の金額の書き方は? |
[回答]中袋に旧字の漢数字で金額を記入します。 |
[質問]中袋なしの御霊前の書き方は? |
[回答]外袋の表に表書きと氏名、裏に住所と金額を記入します。 |